ブリヂストンは8月2日、兵庫県の雲雀丘学園の生徒を招いて開催された、持続可能な未来について考えることを目的としたサマー合宿の模様を報道陣に公開した。
このイベントは、企業での課外活動を通じて自ら学び、考え、行動する力を育む探究型学習を実施する雲雀丘学園の「探究プロジェクト」の一環として開催されたもの。未来の子供たちからの預かり物である地球のため、従業員、社会、パートナー、顧客と共に、持続可能な社会を支えることにコミットしていくブリヂストンの考え方に共感した同学園から依頼されたもので、今回が初開催となる。
会場となったのはブリヂストンのイノベーション拠点である「Bridgestone Innovation Park(BIP)」で、東京・小平市のブリヂストン技術センター内にある複合施設。合宿期間は8月1日~3日の3日間で、参加した生徒は同学園の中学3年から高校2年生までの15名となる。サステナブル素材を活用したラジコンカーのタイヤ制作グループ(Aグループ)と、未来のモビリティ・サービスを提案するグループ(Bグループ)の2つに分かれ、研究・発表を行なうことで、サステナビリティへの意識醸成と、思考・判断・表現力を培うことが目的だ。
ラジコンカータイヤ製作プロジェクトを担当するAグループは、1日目のタイヤの性能やゴム材料の基礎、ゴムの基本特性、サステナビリティの考え方に関する講義を参考に、グリップ力やロングライフ、エネルギー効率、環境性など、それぞれが目指すタイヤの性能目標を最初に想定。さまざまな特性を持つ3種類のゴム(天然、合成、サステナブル)、3種類のカーボン(カーボンブラック、リサイクル、シリカ)、2種類の潤滑油の中から配合のレシピをグループワークによって調整した。これに合わせてスタッフが即日で製作したそれぞれのタイヤやゴム自体の性能を2日目に実験することで、アイデアを形にし、予測し検証する経験を体感することになった。
実際の引張試験ではゴムが切れるまでの強さを測定することで耐久性の指標を理解したり、跳ね返り試験ではゴムの球体を1mの高さから落として跳ね返った高さを測ることで、どれくらい熱として逃げたか=燃費性能の指標を理解したりすることができた。また、走行性能テストでは、特性が出やすいFRのラジコンカー(京商製の「フェアレディZ」)に製作したタイヤを装着。バネ計りにクルマを取り付けたけん引力測定でグリップ能力を測ったり、最終日のラジコンレースに向けた練習走行を行なったりしていた。
合宿に参加した同学園の中学3年生、茂永幸季さんは、「私のタイヤはグリップ重視で製作したので、シリカの配合が多くなっています。明日のレースでは絶対に勝ちます」と自信満々。好きな科目は理科とのことで、プログラムをとても楽しそうにこなしていた。
また、このグループを担当したスタッフによると、「彼らは、長持ちすること=サステナビリティという考え方を最初から持っていたので驚きました。ゴムについても、それぞれが作ったタイヤによって匂いが異なるのかどうかまでを確かめていたので、本当に探究心が旺盛なのだと感心しました」とのことだ。
もう一方のBグループは、持続可能な社会を創り出すための8つの価値(ブリヂストンE8コミットメント=Energy、Ecology、Efficiency、Extension、Economy、Emotion、Ease、Empowerment)とブリヂストンの先端技術を組み合わせて、2050年に向けた価値あるモビリティシーンやサービスを提案するというもの。こちらはすでに4月からブリヂストンの技術者とオンラインミーティングを行なっており、3か月の検討を経て今回の発表となった。
さらに当日は、同社に所属するバドミントン東京2020パラリンピック7位の小倉理恵選手の指導のもとに、一般用と競技用の車いすに乗って室内外を実際に走行してみることで、提案に対する最終確認を行なうこともできた。
具体的なアイデアとしては、「ベビーカー兼車いす」「車いす型バイク」「エアフリータイヤを使用した水陸両用バス」の意欲的な3つだ。技術者からは、「面白いアイデアがたくさんあってよかったなと思いました。実はイメージしたものを形にする際は、トレードオフ、つまり何か1つよくするとその代わりに失うものが必ず出てきます。入れたい機能と、それをするためにマイナスになるところが同時にあることを頭に入れて考えると、より具体的になってくるかなと思います。その両方をよくするために、技術者はいつも苦しんでいます。そうした視点が参考になれば、と考えました」とのアドバイスがあった。
最終日の午前中はそれぞれが資料をまとめ、午後の発表会に臨む予定だ。そしてラジコンカーのレースももちろん行なわれる。
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