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Monday, January 2, 2023

【ライブレポート】桑田佳祐、35周年締めくくる年末公演も出し惜しみ無しの ... - BARKS


2022年12月30日、横浜アリーナで桑田佳祐を観た。ソロアーティスト史上初となる3度目の5大ドーム公演を含む<桑田佳祐 LIVE TOUR 2022「お互い元気に頑張りましょう‼」supported by SOMPOグループ>の追加公演となった横浜アリーナ公演は、28、30、31日の3日間。ソロデビュー35周年を記念するベストアルバム『いつも何処かで』が各チャートで1位を記録する中での最高のタイミングだ。35年にわたって持続する桑田佳祐の巨大なアーティストパワーには本当に驚かされる。5大ドームをすべてソールドアウトにした直後だけに、人で埋まった横浜アリーナさえも狭く見えてくる。

ステージ上にしつらえたバーカウンター「若い広BAR」でのダンサーの寸劇をイントロ代わりに、中央に置かれたドアを開けて登場した桑田佳祐がゆったりとジャジィなバンドサウンドに乗せて「こんな僕で良かったら」を軽やかに歌いだす。洒落たオープニングを経て「若い広場」、そして「炎の聖歌隊 [Choir(クワイア)]」へと一気にテンポを上げ加速。観客全員に配られたリストバンド型ライトが音楽とシンクロして七色に輝き、アリーナを美しいイルミネーションで染め上げる。そして3曲目で早くも金テープ発射。序盤3曲でつかみはOK、期待しかないスタートダッシュだ。

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「1年振りに横浜アリーナに戻ってまいりました。お忙しい中、ようこそいらっしゃいました。全国からお集まりいただいたんだと思います。ありがとう!」

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おどけて「今年、66ちゃいになりまして」と言う、その姿も声も驚くほどパワフルで若い。ここから7曲立て続けに、明るめの曲調を連ねて波に乗る。「MERRY X'MAS IN SUMMER」は「お正月」とマッシュアップした年末年始仕様で、ダンサー扮するサンタクロースと宝船の演出を添えて。冬の遊園地の映像が美しい「可愛いミーナ」、桑田、斎藤誠、中シゲヲのトリプルギターが最高にかっこいい「真夜中のダンディー」、背後のスクリーンいっぱいに映る雄大な太陽に見とれる「明日晴れるかな」。ヴィジョンにすべての曲で歌詞の字幕が映されるのもうれしい。今はまだ声は出せないが、きっと全員が心の中で歌っている。

サビのラストに向けてメロディがぐんぐん高揚する「いつか何処かで (I FEEL THE ECHO)」の歌もパーフェクト。真冬の情景が良く似合う「ダーリン」から「NUMBER WONDA GIRL~恋するワンダ~」へ、派手な照明とアップテンポの分厚いロックサウンドでぶっ飛ばす。おなじみのメンバー中心に、キーボードとサックスに新顔を加えた11人編成のバンドの安定感は抜群で、管楽器なら何でもこなすホーン隊が特に耳を引く。本当にいいバンドだ。

ツアーで定番だったご当地ソングのコーナー、横浜バージョンはなぜかレッド・ツェッペリン「天国への階段」のフレーズに乗せた「赤い靴」の替え歌で、ダンサーによる音楽コント?はさながらクレイジーキャッツかドリフターズか。一転して「SMILE~晴れ渡る空のように~」では壮大なメッセージでしっかり感動させる、緊張と緩和のバランスが実にうまい。

このメンバーが大好きで、メンバー紹介に一番力を入れてます── 頼れるバンドを紹介する桑田の顔は実にうれしそうで、演奏に細かい技やギャグを散りばめながらそれに応えるメンバーも実に芸達者。さりげなく原由子の31年振りの最新アルバム『婦人の肖像 (Portrait of a Lady)』を告知する桑田も芸達者。そのままアコースティックコーナーへ突入し、「鏡」「BAN BAN BAN」「Blue~こんな夜には踊れない」と3曲続けて。アコースティックだが演出は華やかで、「鏡」ではハーモニカを吹きまくり、「BAN BAN BAN」ではミラーボールが、「Blue~こんな夜には踊れない」ではステージ前で炎が吹きあがり、肌もあらわなダンサーたちが妖艶なダンスを繰り広げる。すべての曲に、練り込まれたイメージと仕掛けがある。

明日は「時代遅れのRock'n'Roll Band」という曲で紅白歌合戦に出場します。ライブなんか来ないでテレビを見てください── 桑田らしいはにかみ口調の告知から、『いつも何処かで』に収録された新曲2曲へ。「なぎさホテル」はノスタルジックにドリーミーに、終わらない永遠の夏へと誘うように。「平和の街」は明るくパワフルに、これからの人生を慈しむように。ラストにボブ・ディラン「風に吹かれて」の一節を滑り込ませたり、ちょっとした遊びが楽しい。

「現代東京奇譚」と「ほととぎす [杜鵑草]」の2曲はほかの曲とは趣が異なり、人の命と一生を深く静かに見つめるようなシリアスなムードでじっくりと。深い情緒の中に古き良き昭和の歌謡曲の香りが濃厚にする。背後にまたたく星の光が目に沁みる。一転して「Soulコブラツイスト~魂の悶絶」は電飾、ミラーボール、派手な照明、ダンサーたちもフルに使って賑やかに、桑田も真っ赤なタオルを首にかけてぐいぐい盛り上げる。迷わず行けよ、行けばわかるさ。おなじみのフレーズの引用は、桑田にとってヒーローの一人だったアントニオ猪木への追悼でありつつ、これから生きていく者への力強い励ましの言葉だ。豪快にぶち上がる炎と火花。桑田佳祐の辞書に出し惜しみと言う言葉はない。

35年前のソロデビューを飾った「悲しい気持ち (JUST A MAN IN LOVE)」は、とことん明るく華やかに。ステージを右へ左へ軽快に動き回り、10回ジャンプで締めくくる動きが若い。ニューオーリンズ風の粘っこいビートで押しまくる「ヨシ子さん」は明るくシュールでサイケデリックに、しかし泣き顔のお面をかぶったダンサーたちのパフォーマンスはかなり不気味だが癖になる。若者文化に疎くなった世代の悲哀を皮肉とユーモア、愛情と自虐を込めて歌った歌詞とあいまって強烈な印象を残す。ライブはいよいよクライマックス。

一番盛り上がるこのシーンで美空ひばり「真赤な太陽」のカバーを歌う、意表を突く選曲。ツアーでもずっと歌ってきたカバーだが、横浜市磯子区出身の美空ひばりの曲はある意味ご当地ソング。わざわざモノマネで曲紹介をする姿が実にうれしそう。そのまま帰ろうとしてダンサーに押し返され、最後は賑やかに「波乗りジョニー」で締めくくる展開もお約束で楽しい。水着の美女と美男をずらりとはべらせて、壮麗なレビューのように盛り上げるパフォーマンスがいい。水着美女にコブラツイストをかけられる桑田。トランペット・菅坡雅彦のずっこけファンファーレで一斉に崩れ落ちるメンバー。最後までハイクオリティ、しかしユーモアを忘れない圧巻のパフォーマンス。

アンコールはたっぷり4曲。シンプルなロックンロールのリフに強烈な皮肉とメッセージを乗せた「ROCK AND ROLL HERO」、生と死の間の世界をシリアスに、しかし美しく幻想的に綴った「銀河の星屑」。たかが歌詞、されど歌詞、桑田佳祐の歌詞は年を経るごとにじんわり深く沁みてくる。そしてやはりこの季節にこれを聴かないと終われない「白い恋人達」。いろいろあったけど今年も悪くはなかったねと、いつも思わせる魔法の曲。広いアリーナいっぱいに光があふれ、頭上と地上に置かれたいくつものミラーボールが満点の星空を作り出す。残すはあと1曲。

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「長時間マスクを着用されたまま、お立ちになったままで、本当に感謝申し上げます。今年はおかげさまでとても充実した年だったと思います。今日は本当にありがとうございました」

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最後に、うちの実力派メンバーたちの胸のすくような生演奏を。という前振りからの「100万年の幸せ!!」は、生演奏と見せかけて後半はメンバー全員で楽器を離れて踊る、最後まで遊び心にあふれたセットリスト。これが桑田佳祐。ソロ活動の35年間、いやサザンオールスターズの44年間を通してずっと変わらないエンターテインメントのスピリット。再びのメンバー紹介、そして闘魂タオルを首に巻いて「1,2,3,ダァー!」の大団円。さらに万歳三唱。「元気でね。また帰って来るよ」。別れを告げる声にもまだ何曲も歌えそうな元気がみなぎる。

年末も、お互い元気に頑張りましょう。ストレートなタイトルに込めた思いを凝縮した、たっぷり2時間40分のライブショー。『いつも何処かで』からの曲が大半を占める、35周年の締めくくりにふさわしいベスト選曲。そして久しぶりの紅白出場からカウントダウンへ、新しい年への準備は整った。2023年もお互い元気に頑張りましょう。桑田佳祐の歌を聴く喜びをかみしめよう。

文:宮本英夫
撮影:関口佳代

【リリース情報】


ベストアルバム『いつも何処かで』
11月23日(水・祝)リリース

完全生産限定盤A [2CD+Special T-Shirt(S size)] 品番:VIZL-2600 価格:¥7,150 (税込)
完全生産限定盤B [2CD+Special T-Shirt(M size)] 品番:VIZL-2601 価格:¥7,150 (税込)
完全生産限定盤C [2CD+Special T-Shirt(L size)] 品番:VIZL-2602 価格:¥7,150 (税込)
完全生産限定盤D [2CD+Special T-Shirt(XL size)] 品番:VIZL-2603 価格:¥7,150 (税込)
通常盤 [2CD] 品番: VICL-67200~67201 価格:¥3,740(税込)

<収録曲>
[DISC-1]
1.若い広場
2.いつか何処かで (I FEEL THE ECHO)
3.波乗りジョニー
4.ほととぎす [杜鵑草]
5.明日へのマーチ
6.可愛いミーナ
7.悲しい気持ち (JUST A MAN IN LOVE)
8.JOURNEY
9.Soulコブラツイスト〜魂の悶絶
10.君にサヨナラを
11.MERRY X’MAS IN SUMMER
12.風の詩を聴かせて
13.SMILE〜晴れ渡る空のように〜
14.平和の街 <2022年 新曲>
15.DEAR MY FRIEND
16.NUMBER WONDA GIRL〜恋するワンダ〜
17.誰かの風の跡

[DISC-2]
1.時代遅れのRock’n’Roll Band feat. 佐野元春, 世良公則, Char, 野口五郎 <2022年 新曲>
2.明日晴れるかな
3.鏡
4.Yin Yang(イヤン)
5.銀河の星屑
6.ダーリン
7.BAN BAN BAN
8.月
9.炎の聖歌隊 [Choir(クワイア)]
10.ヨシ子さん
11.現代東京奇譚
12.100万年の幸せ!!
13.ROCK AND ROLL HERO
14.それ行けベイビー!!
15.白い恋人達
16.EARLY IN THE MORNING〜旅立ちの朝〜
17.傷だらけの天使
18.なぎさホテル <2022年 新曲>

※尚、今回アルバムに収録される楽曲「時代遅れのRock’n’Roll Band feat. 佐野元春, 世良公則, Char, 野口五郎」から得られる収益の一部は、困難に直面している世界の子どもたちの未来といのちを守るために、セーブ・ザ・チルドレンへ寄付させていただきます。

<完全生産限定盤同梱 Special T-Shirt「Anytime, Any-wear Tシャツ」>
桑田佳祐が音楽を作り続けたビクタースタジオが建つ、東京・千駄ヶ谷。数々の楽曲が”此処“から生まれた。
そんな場所で、何気なく、自転車を走らせる。そこには、飾らない日常を特別な日にする音楽があった。場所を選ばす、“ いつも = Anytime / 何処でも = Any(where)/ 着られる = wear ”デザインに、タグまでこだわった上質な一枚。
サイズ:S/M/L/XL
素材:素材:コットン100% 
桑田佳祐 2022年 特設サイトhttps://ift.tt/sCglrMH


【ツアー情報】

<桑田佳祐LIVE TOUR 2022「お互い元気に頑張りましょう!!」supported by SOMPOグループ>
■宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ
11月2日(水)17:30開場/18:30開演
11月3日(木・祝)16:00開場/17:00開演

■福岡PayPayドーム
11月12日(土)15:00開場/17:00開演

■バンテリンドーム ナゴヤ(旧ナゴヤドーム)
11月19日(土)15:00開場/17:00開演
11月20日(日)15:00開場/17:00開演

■京セラドーム大阪
12月3日(土)15:00開場/17:00開演
12月4日(日)15:00開場/17:00開演

■東京ドーム
12月10日(土)15:00開場/17:30開演
12月11日(日)15:00開場/17:30開演

■札幌ドーム
12月17日(土)15:00開場/17:00開演

■横浜アリーナ追加公演
<桑田佳祐 LIVE TOUR 2022「年末も、お互い元気に頑張りましょう‼」supported by SOMPOグループ>
12月28日(水) 16:30開場/18:00開演
12月30日(金) 15:30開場/17:00開演
12月31日(土) 20:00開場/21:30開演

ツアー特設サイトhttps://ift.tt/Zz2NkEi


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