[東京 18日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は18日の衆院財務金融委員会で、40年ぶりの伸び率となった10月全国消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)について「かなりの上昇率」だと述べる一方、来年度は目標の2%を下回る見通しだと改めて説明した。賃金上昇を伴う形での物価安定目標の実現に向け、金融緩和を継続して日本経済を支えることが適当だと強調した。
半期報告を行った後に与野党の議員の質問に答えた。総務省が同日発表した10月全国コアCPIは前年同月比3.6%上昇となり、第2次オイルショック末期の1982年2月以来の伸び率を記録した。黒田総裁は半期報告で、コアCPIの前年比は「エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により、プラス幅を拡大している」と述べた。
ただ、これまでの押し上げ要因が後退することで来年度は2%を下回ると改めて指摘。現時点で賃金上昇を伴うかたちで安定的・持続的に2%の物価安定目標が達成されている状況にはなく、金融緩和を継続するべきだと述べた。
賃金について、黒田総裁は労働生産性の上昇率が1%程度ということを前提すると、2%の物価安定目標を安定的に持続するためには3%程度の賃上げが続く必要があると説明。新型コロナウイルスの影響緩和や政府の観光振興策「全国旅行支援」などでサービス消費が回復し、サービス業の非正規労働者の賃金が上昇しており、これが中小企業の正規労働者に波及していくか注目したいと話した。「いま金利を引き上げて経済回復を遅らせて賃金上昇余地が減るのは望ましくない」とも述べた。
<利払い負担増への配慮、政策運営をしばらず>
為替動向を巡って、最近見られたような円安の急速かつ一方的な進行は「全く望ましくない」とトーンを強める場面もあった。黒田総裁は円安は実質国内総生産(GDP)を押し上げるものの、業種や企業規模、経済主体などによって影響はまちまちで「円安が進むと、家計の実質所得を押し下げて個人消費を押し下げる」とした。
黒田総裁は政府の財政運営に「長期的に国債の信認が失われると金融緩和の効果が失われてしまうので、財政規律は長期的な持続可能性をしっかりと強化する必要がある」と注文した。一方、将来的に日銀が金融緩和からの出口戦略を模索する段階で国債の利払い費を増やすこともあるが「利払い費への配慮から政策の遂行が妨げられることは決してない」と語った。
金融緩和による低金利が企業の新陳代謝を阻んでいるとの批判には「この10年ほど欧米の中央銀行は量的緩和を行い、欧州は大幅なマイナス金利政策も採用したが、このことでゾンビ企業がものすごく増え、まずい、という議論はかつてほど行われていない」と指摘した。企業を存続させることは経済にとってプラスで、金融緩和が続いたために労働生産性が低下したという証拠はないと語った。
(杉山健太郎、竹本能文、和田崇彦 編集:内田慎一)
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