ピップ(大阪市)が若年層に向けたマーケティング施策を強化している。磁気治療器「ピップエレキバン」シリーズの発売50周年で始めたプロジェクトは、文化服装学院とタッグ。AKB48の倉野尾成美さん、下尾みうさんをアンバサダーに起用する新たなプロジェクトも始めて話題となった。その狙いなどをピップの松浦由治社長に聞いた。
ピップエレキバンの50周年特別企画「コリナイ・プロジェクト」は、コリに悩む人が肩コリについて考えるきっかけを提供するプロジェクトだ。22年5月末に発表会を開催して始めた。10月までの期間に人間工学やファッション、サウナなどのテーマを通じて、2つの企画を進める。
1つは、肩がこらないファッションを目指す「コリナイ・コレクション」。文化服装学院の学生から、肩がこらない洋服の案を募り、選ばれたアイデアの洋服をつくる。千葉大学デザイン・リサーチ・インスティテュート教授で人間工学が専門で博士(工学)の下村義弘氏が監修しており、モデルはAKB48の倉野尾成美さん、下尾みうさんらが務める。
2つ目は、「趣味と肩コリ」をテーマにしたオンライントークイベント「コリナイ・カタリバ」だ。「サウナ」「身体づくり」「ゲーム配信」の3つテーマを設定し、それぞれ専門家を招き、おのおのの視点からコリの解決について語る内容だ。8月上旬までに2回のトークイベントを開催しており、9月6日に3回目となる「ゲーム配信」をテーマにしたイベントを実施する。
吾妻拓(以下、吾妻) ピップエレキバン50周年企画「コリナイ・プロジェクト」を22年5月末に始めましたね。面白い名前だなと思いましたが、どのように決まったのですか。
松浦由治氏(以下、松浦) ピップエレキバン発売50周年ということで、何か情報発信をしていきたいという思いがありました。国民病と呼ばれる“肩コリ”ですが、ピップで22年4月に調査を行ったところ、肩や首など身体のコリのせいで、仕事に支障をきたしたことがあると答えた人は73%に上りました。しかしその中で、コリへの対処法を持ってるという方は16%前後しかいなかったのです。多くの人が抱えるコリという悩みに対し、改めてそれぞれなりの解消法を見つけていただきたいという思いから「コリナイ・プロジェクト」を立ち上げました。
吾妻 「ファッション」と「オンライントーク」を手段にされたのはなぜですか。
松浦 ピップエレキバンの購入者は50~70代が多く、若年層が少ない。より若年層に訴求していきたいという思いがありました。還暦を過ぎた私は、やはり「テレビを使ったプロモーションを」という発想になってしまうのですが、若い方々のライフスタイルを思うと、それは得策ではないのかなと。今回は、これまでのテレビCMなどとは違った媒体からのアプローチを考えました。SNS(交流サイト)で盛り上がるような企画を意識し、少ない予算の中で、どうインパクトのある企画を立てるか議論した結果、この2つの企画を進めるに至りました。
オンライントークでは、「サウナ」「身体づくり」「ゲーム配信」といった肩こりとの親和性の高そうな分野を選出しています。それぞれの分野の識者が、コリに対してどのように対応しているのか伺います。「サウナ」は先日配信を終え、同時視聴者数は300人ほど。多いとは言い難いですが、狭く深いアプローチができたのではないかと思います。逆に、「コリナイ・コレクション」の方は、もっと多くの方々に楽しんでいただける内容になっているのではないでしょうか。
吾妻 「コリナイ・コレクション」は22年10月にお披露目ということですが、経過はいかがですか。
松浦 5月下旬に下村義弘先生の「こりない塾」を実施して、人間工学の講義を受けた文化服装学院の学生80人から「未来の“肩がこらない服”」デザイン案をいただき、社内で19案まで絞り込みました。現在、19案のデザインから最終制作の5案を絞るための一般投票を終えた段階です。決定したデザインの公開は、10月11日のイベントでお披露目を予定しています。
吾妻 印象深いデザインはありましたか。
松浦 下村先生の「こりない塾」では、日本にはお辞儀をする文化があるので、日常的に頭を下げる動作が多く、首の負担から肩がこりやすいというお話があったのですが、この話をデザインに取り入れた学生さんがいました。この服は頭を下へ向けないデザインらしいんですよ。デザイン画には「ラグランスリーブや立体裁断を応用し、着ると肩が後ろに引かれ、肩が凝る要因の猫背や前かがみなどを軽減する。また、まちを切り替えで挟みファスナーで開閉できるようにし、いかなるときでも最善の着心地を意識する。首元のリブを固くそして下へ向きにくくすることでスマートフォンを見るときに下を向くことができず肩こりの原因を解放する」という説明があります。下村先生の講義がしっかり反映されていますね。
「肩がこらない」というテーマをどう捉えるかは、本当にみなさんそれぞれでした。例えばこちらは、クマのぬいぐるみがたくさんついていて、このクマたちが布を引っ張ってくれるから重さを感じないという案です。実際に作るとぬいぐるみの分、重さはあると思いますが、斬新な発想です。「かわいいクマちゃんが側にいる」ということは精神的な癒やしがあり、肩の力が抜けるという提案なんです。他にも、すぐ寝られるという精神的負荷がない状態を提案するものや、服をつるしているから物理的に軽いという案など、学生さんの柔軟な発想に、ピップ担当者は感心しっぱなしでした。
この記事は会員限定(無料)です。
からの記事と詳細 ( ピップが“コリない服”を開発? 企画の狙いを松浦社長に聞く - 日経クロストレンド )
https://ift.tt/dNwLKxQ
No comments:
Post a Comment