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Thursday, April 14, 2022

慢性腎臓病に対するMR拮抗薬が登場 - 日経メディカル

 2022年3月28日、慢性腎臓病(CKD)治療薬のフィネレノン(商品名ケレンディア錠10mg、同錠20mg)の製造販売が承認された。適応は、「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(末期腎不全または透析施行中の患者を除く)」、用法用量は「eGFR 60mL/分/1.73m2以上;1日1回20mgを投与。eGFR 60mL/分/1.73m2未満;1日1回10mgから開始し、血清カリウム値、eGFRに応じて、投与開始から4週間後を目安に20mgに増量する」となっている。

 CKDは腎障害や腎機能の低下が持続する疾患で、血圧などの血行動態、血糖コントロール不良などの代謝に加え、炎症や線維化が要因とされている。CKDの重症度は、原疾患、腎機能(eGFR)、蛋白尿・アルブミン尿に基づいて評価されるが、近年では、糖尿病を起因とする透析導入が増加の一途をたどっている。国内外のガイドラインでは、糖尿病(特に2型糖尿病)を合併したCKDの予防および治療としては、食事など生活習慣の改善、ならびに血糖、血圧および血清脂質の最適化、さらにはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)が標準治療薬として推奨されている。さらに、2021年にはナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT)2阻害薬のダパグリフロジンプロピレングリコール水和物(フォシーガ)もCKDの適応を取得した。

 CKDに対する既存薬のうち、ACE阻害薬、ARBは主に代謝および血行動態に関する因子を標的としており、SGLT2阻害薬は血糖改善や尿細管糸球体フィードバックによる糸球体過剰濾過の改善等により腎保護作用を示すと考えられている。しかし、炎症や線維化を標的とする治療薬は承認されていないのが現状であった。

 腎臓における炎症や線維化には、ミネラルコルチコイド受容体(MR)の過剰活性化が重要な役割を果たしていることが解明されている。MRは主に腎尿細管上皮細胞において電解質の貯留・排泄の調整をつかさどり、さらに尿細管以外の腎糸球体、心臓、血管など全身にも広く分布していることから、MRの過剰活性化により腎臓や心血管系において、炎症、線維化、ナトリウム貯留や臓器肥大が生じることが明らかになってきた。

 フィネレノンは炎症および線維化を引き起こすMRの過剰活性化を抑えることで、心血管・腎臓障害を抑制する、非ステロイド型選択的MR拮抗薬である。既存のMR拮抗薬としては、スピロノラクトン(アルダクトンA他)、エプレレノン(セララ)、エサキセレノン(ミネブロ)が「高血圧症」などの適応で臨床使用されているが、CKDの適応はない。

 2型糖尿病を合併するCKD患者を対象とした2つの国際共同第III相試験(FIGARO-DKD、FIDELIO-DKD)の結果から、本薬の有効性および安全性が確認された。海外では、2022年2月時点、米国、オーストラリア、欧州連合(EU)で承認されている。

 副作用として、主なものは低血圧、糸球体濾過率減少(各1%以上)、低ナトリウム血症(1%未満)であり、重大なものは高カリウム血症(8.8%)が報告されているので十分注意する必要がある。

 薬剤使用に際しては、下記の事項についても留意しておかなければならない。

●ACE阻害薬またはARBによる治療が適さない場合を除き、これらの薬剤が投与されている患者に使用すること

●投与によりeGFRが低下することがあるので、eGFR 25mL/分/1.73m2未満の患者ではリスクとベネフィットを考慮して、薬剤投与の適否を判断すること(添付文書「効能又は効果に関連する注意」や、医薬品リスク管理計画書[RMP]を参照)

●投与開始または再開、増量から4週間後、その後も定期的に血清カリウム値およびeGFRを測定し、用量を調節すること(添付文書「用法及び用量に関連する注意」
を参照)

●10mg錠と20mg錠の生物学的同等性は示されていないので、20mgを投与する場合に10mg錠を使用しないこと

●主にチトクロームP450(CYP)3A4により代謝されることから、CYP3Aを強く阻害するイトラコナゾール(イトリゾール他)などとは併用禁忌である

●投与開始時に血清カリウム値が5.5mEq/Lを超えている患者、重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)患者、アジソン病患者は投与禁忌である

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