NECレノボ・ジャパングループは3月11日、「全社一斉テレワーク・デイ」を開催した。
同グループでは、全従業員が可能な限り一斉にテレワーク(遠隔勤務)をする「テレワーク・デイ」を2016年から年に数回実施しており、PC USERでは同年に開催された初回のテレワーク・デイの模様を取材している。
今回のテレワーク・デイは、東日本大震災から9年を迎えることに合わせて実施されたものだ。ある意味で「テレワーク先進企業」ともいえる同グループだが、テレワークを推進する過程で、良いこともあった反面、課題も見えてきたという。
働き方改革の文脈に加えて、昨今は「新型コロナウイルス」の感染拡大を防止する観点からも注目を集めるテレワーク。同グループの取り組みを見てみよう。
テレワーク成功のカギは“3つ”
NECレノボ・ジャパングループは、「働きやすさ No.1 企業(Best Place to work)」を経営目標として掲げている。「より幸せな従業員は、より良いパフォーマンスを実現できる」という観点から、従業員のワークライフバランスの柔軟性も重視しているという。テレワークの推進は、柔軟性を確保する手段の1つだ。
テレワーク・デイ以前から、同グループはテレワークを導入している。2015年12月以前は、週1回を上限にテレワークを利用できるようになっていた。テレワークを実施しやすくするために、2014年11月には固定電話回線をユニファイドコミュケーション(UC)システムに統合し、テレワーク中でも電話を受けられるようにした。
2015年12月には利用回数(日数)に上限のない「無制限テレワーク」を試行導入し、2016年4月には正式な制度とした。2018年には、コミュニケーションツールを「Skype for Business」から「Microsoft Teams」への置き換えを開始している。
レノボ・ジャパンとNECパーソナルコンピュータ(NECPC)の社長を兼務するデビット・ベネット氏は、テレワークを制度として定着させるカギとして「無制限」「経営者のコミットメント(関与)」「定期実施」を挙げる。
無制限は、回数に制限なく使えることを指してはいるが、それに加えて利用する理由や場所に制限を設けていないこともポイントだ。テレワークをする前日までに上長の承認を取る必要はあるものの、理由は不問としている。勤怠管理はオフィスに出勤した場合と同様で、Webベースで「出勤」「退勤」を登録する。
経営者のコミットメントは、経営(管理)者層も積極的にテレワークに関与することを指す。簡単にいえば、経営陣もテレワークを実践するということだ。ベネット社長も、自宅のゲーミングPCを使って積極的にテレワークをしているという。「テレワークをしている姿を、(従業員に)しっかりと見せることが重要」(ベネット社長)なのだ。
定期実施は、文字通りテレワークを定期的に実施することを指す。制度としてテレワークがあっても、実際に利用しなければ「宝の持ち腐れ」となる。いきなり利用することになったとしても、利用経験がなければ戸惑うこともある。テレワーク・デイは、テレワークをするための「訓練」の機会でもある。
同時に、テレワーク・デイはテレワークの「課題」を洗い出す役目も果たしている。実施後は必ず従業員アンケートを実施し、課題を洗い出す。出てきた課題を1つ1つ解決していくことで、“持続可能なテレワーク”の実現を目指しているという。
“ネガティブ”な面にも目を向けないとテレワークは成功しない
先述の通り、テレワーク・デイは「テレワークの訓練」であると同時に、「テレワークの課題」を洗い出す場でもある。PCやスマホなど、ICT機器を手がけるNECレノボ・ジャパングループだから問題は全くない……はずもなく、いくつもの失敗や問題を乗り越えつつ、テレワークを進めているという。
同グループが2019年に取った従業員アンケートによると、テレワークによって生産性が向上したと答えた人は92%、ワークライフバランスが向上したと答えた人は76%だったという。前向きな評価が多いようにも思えるが、同グループのワークスタイル・エバンジェリストを務める元嶋亮太氏の話を聞く限り、後ろ向きな評価こそが、テレワークを定着させるための重要なヒントであるようだ。
同グループのアンケートでは、6〜7割の従業員は少なくとも1カ月に1回はテレワークをしていると回答しており、時がたつにつれて、「週1回以上」と答える人が増えているという。しかし、見方を変えると3〜4割の従業員は、普段からテレワークを使っていないことになる。
なぜテレワークを使わないのか調べてみると、「部署でテレワークをする人がいない(少ない)」「上司が(テレワークに)否定的」といった「空気を読んだ」(元嶋氏)結果であることも少なくないようだ。もちろん、設備や業務の都合でテレワークが困難な場合もある。
全てを一気に解決することは難しいが、1つ1つの課題を解決していくことはできる。テレワークに否定的な上司の中には、人事における「360度評価」(部下や社外関係者の意見も加味した評価)をきっかけにテレワークに取り組むようになった人もいるという。固定電話のUCシステムへの統合も、「電話を受けるために出社しなければならない」という業務上の制約からの解消につながった。
テレワークでは、作業効率も課題となる。最新のアンケートでは、約9割の従業員が「効率が上がった」または「(オフィスにいるのと)変わりない」と答えている。しかし、「効率が下がった」と回答する人も約1割いた。ワークライブバランスについても、わずか3%ではあるが「低下(悪化)した」と答える従業員が存在する。
効率が低下する理由はさまざまだ。例えば、アンケートでは「クレーム処理を家族の前でしたくないので、庭やベランダに出ないといけない」「テレワーク中の仕事仲間と連絡が取れない」といった声が寄せられるという。ツールへの慣れもあってか、後者についての不満は減少傾向にあるが、ゼロにはなっていない。ワークライブバランスが悪化する要因もさまざまで、「家族から『家で仕事をするな』と言われる」「子どもやペットに仕事を邪魔されてしまう」といった声があるという。
簡単にまとめると、家にいると、むしろ集中することが困難という人も少なくないということだ。この点については、コワーキングスペースを含めて、執務できる場所を増やす検討を進めている。
テレワークに対する心理的障壁を取り除くために、オフィスで行う会議には必ずオンライン会議の設定も行うようにしているという。
本社オフィスの全ての会議室には、オンライン会議用のシステム(ThinkSmartシリーズ)が設置されている。そのため、Microsoft Teams(またはSkype for Business)の会議情報をスケジュール添付すれば、都合に合わせてオンラインでもオフライン(会議室)でも会議に参加できるという寸法だ。
オンラインでの会議をしやすくするために、使いやすいコラボレーションツールの支給や、ハイクオリティーなヘッドセットも支給しているという。
デバイスも重要だが、守るべきは情報
NECレノボ・ジャパングループでは、個々人の業務スタイルに合ったノートPCを1人1台支給している。もちろん、テレワークに便利なLTE(モバイルブロードバンド)対応モデルも対象に含まれる。
支給されるノートPCの画面サイズは14型が一番多く、希望に応じてモバイルモニターやヘッドセットなどを支給することもあるという。
テレワークを拡大する際の懸念材料として、デバイスの紛失や盗難が挙げられる。この点について、元嶋氏は「極論をいえば、ノートPCを紛失すること自体は大した問題ではない。それよりも、PCで扱う情報を守ることの方が重要だ」と語る。デバイスの紛失そのものよりも、情報漏えいのリスクに備えることの方が重要だということだ。
情報は、さまざまな方法で漏えいしうる。元嶋氏は、以下の準備や検討ができているかどうか確認すべきだと語る。
- デバイスの暗号化と、適切なパスワード設定
- ショルダーハッキングやソーシャルエンジニアリングへの対策
- OSやファームウェア(UEFI)、アプリを常に最新に保つ仕組み
- ダイレクトアクセスやゼロトラストセキュリティモデルの導入
元嶋氏は「テレワークを支えるためのテクノロジーは、現状でも整っている」という。一方で、「いきなり適切に使いこなすことも困難」とも語る。
実際に運用しつつ、問題が生じたら改善していく――テレワークの定着には、地道な取り組みが必要となりそうだ。
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